ユーモラスさが目立つストーリーで娯楽性が高い。映画のイメージの後ろに不気味にそびえるギガゾンビが強烈だが、意外にも本編ではあまり目立たない
冒険の始まりの理由からして突発的な家出という、かなりユーモラスな内容の娯楽性が高い作品。 今回ののび太たちは結構わがまま放題だが、周りの人もおおらかで前半は牧歌的で面白い。
とはいえ、家出した後生活する土地の無さに他人や社会による土地の占有を感じて、社会の成り立ちに疑問を持ったりと社会派的な内容も見え隠れする。 時間犯罪や宗教と技術を利用した搾取の問題も含めて重くて複雑な世界観を感じさせるものがあるが、全般的にユーモラスで重苦しさを感じさせない物語になっているのはさすがドラえもんというところか。
イメージ画などでは強烈に不気味な雰囲気で個性を感じさせる敵役ギガゾンビだが、本編では存在の不気味ささえ感じさせるものの、登場は最後の最後。 しかも真打ち登場にも関わらず、あまり見せ場もなくあっけなくやられるのは些か拍子抜けする。
ドラえもん史上ここまで強烈に敵役を押し出している作品はないのだから、もう少し活躍させてくれると面白かったのだが。 本編中不穏な影を匂わせ続けるだけに、登場してからの不甲斐なさはやや期待外れ。
ただこのギガゾンビの存外な不甲斐なさも含めてユーモラスさがあり、展開も比較的スピーディでテンポ良く楽しめる。
ギガゾンビについてはおそらく今年公開の「新・日本誕生」では汚名返上すべく、八面六臂の活躍をしてくれるのではなかろうか。