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低成長時代の資本主義の救世主となるかも知れない「減価する貨幣」

シルビオ・ゲゼル入門―減価する貨幣とは何か

 

 本書は日本ではあまり知られていない経済学者シルビオ・ゲゼルの経済理論を一般向けにわかりやすく解説する一冊である。

 シルビオ・ゲゼルはその特異な経済理論が強調されるが、一方で彼の減価する貨幣は期間と地域も限られているものの、実際に運用されたことがあり、その効果は短期的に劇的な経済立て直しを実現した。

  本書のメインはその「減価する貨幣」理論についてであるが、それにとどまらずシルビオ・ゲゼルの生い立ちから彼の「母親年金」など独自の経済政策案に論及し、さらにシルビオ・ゲゼルが生きた時代や経済学の基礎についても平易でわかりやすく解説しながら叙述していく。

 

    ◆◇◆

 

 さて、現実社会の2016年現在の日本ではマイナス金利が導入された。 これはいわば貯蔵される貨幣に対してマイナス圧力をかけることで市中の通貨流通量を増やそうとする試みである。

 理論上、市中の通貨流通量の増大はそれだけで大規模な経済効果をもたらすから、一見この方法は正しいように見える。

 しかし実際はこの方法は銀行の収益を圧迫し、銀行が回収性の低い融資を避けたり、あるいは収益を確保するために各種サービス手数料を増大させて通貨そのものの移動を制限する方向にも働きかねない。

 実際日本ではアベノミクス導入後に日銀の意図に反して貯蓄に回される通貨量が増え続ける傾向にあり、マイナス金利導入でもすぐにその流れが変わるとは思われない。 長期的にはむしろ銀行の信用供与の低下により、市中の通貨が失われていく可能性さえある。

 

 それに対し、シルビオ・ゲゼルのアプローチは通貨そのものの流通能力を高めるというものである。 一定期間で価値が減衰していく貨幣は貯蓄されにくいので次々と交換手段として使われる。

 実際経済が壊滅的に破壊されていた世界恐慌下のオーストリアの一地方都市ヴェルグルで「減価する貨幣」理論に基づいた地方通貨が発行され、短期間で劇的に経済を活性化させるという効果をもたらした。 借金だらけで町役場さえ税収がなく、誰もがお金のなかった町で既存通貨に変わる「減価する貨幣」が経済を救ったのである。

 本書はこのエピソードの他にも各地の地域通貨の試みを丁寧に紹介し、通貨の在り方を多面的に論じ、また「減価する貨幣」を政策的にどう実現するかまで構想する。

 

    ◆◇◆

 

 減価する貨幣は実体経済が低成長を迎えるのに金融経済が膨張し続けるというアンバランスな構造になっている現代社会の金融経済に一つの解決の糸口を与えるものであることは間違いない。

 

 この魅力的でちょっと常識を外れた経済学者の見識は、しかし我々に希望を与えてくれるものとなる可能性がある。

 シルビオ・ゲゼルの経済理論は自然な人間本性に沿った経済を目指すもの、わかりやすくいえば「身の丈に合った経済をどう作るか」という理論である。 これは癌細胞のように膨張していく金融経済を適正な水準に引き戻していく方法を模索する道だ。

 今もっとも必要とされている考え方ではなかろうかと個人的には思う。

 

 本書は次の時代を開くかもしれない、シルビオ・ゲゼルの経済理論入門書として非常におすすめ。

ゲゼルとは編集

  • ドイツの商人、経済学者。シルヴィオ・ゲゼル。1862−1930 。初め商人としてアルゼンチンで活動する。ドイツに帰り経済学者として行動する。「全ての物の価値は、時間とともに下がるのに、お金(マネー)だけは価値が上がるのはおかしい」と考えた彼.. 続きを読む
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