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宗派対立で片付けられない地政学リスク。イラクの空白がもたらしたもの

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2016年 1/19 号 [サウジvsイラン 中東冷戦]

 

 イランとサウジアラビア。 域内の軍事大国として両国は中東を舞台に陰に対立を続けてきたが、いよいよその冷戦が熱くなろうとしている。 ニューズウィークは対立は激化しているが、両国とも本格的な抗争は望んでおらず、結局は冷戦にとどまるとの見方だ。

 ニューズウィークはこの対立を宗派対立の問題で済ますことは適切でないと論じている。 実際スンニ派とシーア派はその長い歴史の中でつねに対立してきたわけではなく、共存の時代も長かった。 宗派対立という表面的な問題の裏にはそれ以上に深い政治的対立がある。

 焦点はイラクだ。 イラクはイランにとってもサウジアラビアにとっても共通の敵で、両国の間にこの独裁国家がある限り両国は直接対立を免れていた。 曲がりなりにもフセイン独裁国家が国内統治においては安定しており、世俗主義的な政策の下、多数派のシーア派をうまく制御していたのも大きい。

 ニューズウィークの言うとおり、イラク戦争後にイラン寄りの政権がイラクに誕生したことで中東のパワーバランスが崩れ、さらにアラブの春が王政を脅かしたことでサウジアラビアに危機感を抱かせ、イランの影響力拡大を座視できなくなっているというのが本音だろう。

 

 今号のニューズウィークでは触れられていないが、最近サウジアラビアの王室では新国王の指導で体制変更が行われており、その影響で不満を持つ王族らが生じて中東一巨大な王家の結束にも足並みの乱れが出ている。 現体制の正統性をイメージづけるためにもサウジは妥協的にはなりづらいだろう。

 逆に国際的な制裁が解除されるイランのほうが制裁復活に結びつきやすい強硬手段はとりづらいだけに実際は妥協しやすい状況にある。

 

 しかし一番の問題はやはり両国世論だ。 サウジアラビアはメッカとメディナという二大聖地を抱え、シーア派民衆にとっても聖地巡礼は信仰の核心に位置する。 両国の群衆の接触がトラブルに発展し、ナショナリズムに火をつければ両国の体制に思わぬ打撃を与えることにもなりかねない。

 つまるところ今回の冷戦もナショナリズムの表れで、宗派対立という形容はそのスパイスに過ぎない。 王制と共和制という異なる論理に立つ両国の政治構造上の違いも、指導者同士の政治的解決を困難にしている。

 

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2016年 1/19 号 [サウジvsイラン 中東冷戦]


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