三国志についてのエッセイ集といった感じで読みやすい。比較的自由な視点で縦横無尽に三国志の世界を周遊、散策する快著
体系的にまとめられた解説本というよりは、あれやこれや思いついたところから三国志世界を見渡して話題を取り出し、適度に整理して見せるエッセイのまとまりといった感じ。 肩肘張っていない文体と構成なので、比較的読みやすい。
ただ著者の個人的な三国志との関わりから始まる序論は、日本における三国志受容を世相との関連をにおわせながら振り返るものになっており、学術論文的な纏め方とはまた違った精彩のある味わいがある。
本書の内容はそれほど細かいものでもなく、独自な視点を提起するところも少なく、三国志マニアの人には物足りないところもあるだろうが、三国志エッセイとしては小気味よい切り口とまとめ方で、読後感は充実している。
著者と一緒に三国志世界を横に斜めに、俯瞰したり逆に微細に分け入ったりと旅した後、自然と視野が広がった気がし、三国志についての断片的な知識がデフラグされてうまくつながる感じがして満足感は高い。 なるほど快読である。